・貯金や国債では難しく
貯金がインフレに対応困難なのは、長期の定期預金の場合です。定期預金は作成時に約定金利が定まり、その金利に応じた利息が支払われます。なので、将来インフレになったとき、過去に作成した定期預金の利率は固定化されているので、インフレ率に見合う利息をもらえない(インフレになったからといってもらえる利息が増えない)ので、インフレ対応が困難だといわれています。なお、期間が短いもの、または流動性が高いもの(普通預金など)は、インフレ率に緩やかに連動します。インフレ率が向上すると、金融引き締めになります(インフレ抑制は日銀の最重要課題のひとつ)。引き締めのため、政策金利を上げてきます。政策金利が上がると、銀行の店頭金利も上がります(預金も貸し出し金利も)。ただし、ほとんど場合、インフレ率よりずっと低い利率になります。これは、普通の国債も同様。ただし、物価連動国債というインフレ率に追従する国債もあります。
・投資信託や株式投資での運用の必要がある
上記述べたとおり、預金などの安全資産では、インフレ率を上回る利率がつくことはほぼあり得ません。インフレ率を上回るパフォーマンスをあげたいなら、リスクを取って運用する必要があります。代表的な運用商品は投資信託や株式などです。これらは、インフレに基本的に追随します。インフレでモノ・サービスが売れるとこれまでより多くの売り上げが上がります。その分、利益率が同じでも売上高が上昇するので営業利益も上昇します。そのような会社の株は価値が高まるので買い圧力が生まれ、その結果株価が上昇します(実際は、そんなに単純ではないのですが、インフレ率と株価にある程度の相関がある、というくらいの理解でよいです)。投資信託と株式は、それぞれメリット・デメリットがあります。投資信託は、少ない価格でいろいろな銘柄に分散して投資できるので、リスク分散できます。しかし、保有コスト(信託報酬)がかかります。高いものだと年2%くらい取られます。組み込んでいる銘柄にまったく値動きがなくても、またはたとえ組み込み銘柄が値下がりしたとしてもきっちり取られます。年1、2%が必ず取られるというのは、少ないように見えて大変大きなコストです。投資信託で利益を上げるには、信託報酬分くらいを稼いでトントン(この時点で利息がもらえる預金や国債に負けてる)、それ以上のパフォーマンスを継続的にあげ続けなければならないですが、そんなに簡単なものではありません。一方、株式は保有コストはかかりません。銘柄をしっかり選べば、日経平均のパフォーマンス以上のパフォーマンスを上げる可能性もあります。しかし、リスクは高まります。最悪、買ったときより、10分の1、100分の1、または紙切れになる可能性もあります(普通、そうなる前に損切りすると思いますが)。
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さて、上記を裏から言えば、デフレ傾向の場合は、定期預金や国債のほうが実質資産が増加します。デフレなので、モノ・サービスの値段が漸減している。しかし、定期預金や国債では、作成時の約定金利が保障されているので、名目上の資産も増えるし、実質上の資産価値も向上します(デフレなので、後になればなるほど名目上必要なお金の額が少なくてモノ・サービスが買えます。たとえば、今、1個100万円のモノが1年後に90万円で買えるようになれば、定期預金で1年間100万円を預けていれば、お釣りが10万円もらえる上に、100万円に対する1年分の利息ももらえます)。一方、株や投資信託はデフレ傾向では、デフレに追随して下落しやすいです。
一言で言えば、デフレが続く限り、株式などのインフレに追随しやすい商品より、利息が固定された預貯金の方が、名目・実質とも資産が増えます。
現状ですが、はっきりいってデフレ傾向です。で、このデフレがどのくらい続くかによってお金の運用をどうするか決めなければなりません。デフレがかなり長期間続くと思うなら、その続くと思われる期間の定期預金を作るほうが、安全に・かつ資産を増やすことができます。一方、デフレは短いと思うなら、この間に株式などに投資しておくのも手です。安い今が買い時で、デフレ脱却とともに株価も上昇するので。または、モノに換えておくのも有効かもしれません。たとえば、金(ゴールド)や、不動産、車や家電製品など。インフレ率が上昇すれば、これらのモノは値上がりして、買うのにより多くのお金が必要になるので。
ここからは個人的見解ですが、デフレはここ1、2年は続くと見ています。外部状況(米国だけでなく、新興国も軒並み消費低迷)、国内状況(消費が低迷しているので、小売は安売り合戦している)、資源安(しかも資源を海外から買うときは、先物価格で予約して買うことが多いので、実際に資源を安く手にできるのはこれから最低数ヶ月続くと思います)、円高(これも輸入の場合、資源を安く手に入れるのに役立ちます)など、モノ・サービスの価格を決める要因でデフレになる要因が多くあるので。ただし、2、3年以降、5年後、10年後はどうなるか分かりません。私なら、国内株で優良銘柄で相当割安感がある株式現物、1年もの、3年もの、5年ものあたりの定期預金で分散して運用しますね。安いからといって、株式を重点的に買うことはしません。上記述べたとおり、あまりインフレに動く力が見えないので。元本保証で利息のつく預金にシフトします。しかし、長期に渡ってデフレ傾向が続くか不透明なので、期間を分けて定期を作ります。1年後にインフレに転じていれば、1年後に満期になった定期を株式などに振り向けるかもしれません。株式などは、先行きが不透明な時期に敢えてリスクを取らなくても、活況になったときのほうが銘柄選択の幅も増えるので。不況時こそ安く買えると言う人もいますが、さらに安くなる危険もあるし、買える銘柄も限られるので、あまりチャンスとは思えません。