私が最近読んで印象に残った短編です。
●恐怖の支配する闇 「花輪の海」
http://blogs.yahoo.co.jp/brainandaging/34342506.html
横山秀夫の作品集『真相』(2003年6月刊、文庫版あり 双葉社)に収められた短編『花輪の海』
大学空手部の暴力支配と合宿という名の集団リンチ事件を描いた作品である。読む者に間違いなく恐怖感を与え、溜め息とともに“大学体育会系”というイメージを再確認させる。
S大に進学した城田は甘言に誘われて空手部へ入部する。一度入部すると二度と出られない地獄、それが空手部だった。稽古という名の集団暴力、上級生だけではなく空手部OBが登場するとさらにエスカレートする。
空手部から逃走したものは執拗に追求され暴行を受け、大学を退学していった。残った6人の一回生は恐怖の夏合宿で入っていく。
事件はそこで起きた。
夜昼問わぬ空手の稽古、夜襲という名の夜間のしごき、海の中での千本突き、少しでも姿勢が崩れれば容赦なく蹴りが入る。
合宿七日目の夜、サトルが海に沈んだ。皆が探すも引き上げられた時息絶えていた。
いっせいに逃げ出す空手部OB達、合宿は中止された。
城山は、後の就職試験の面接で「人生でもっとも嬉しかったことは何ですか?」と聞かれ愕然とする。
人生で最も嬉しかったことは、そう、あの空手部の夏合宿で友人が死んだこと、だったのだ。合宿が中止されたのだから・・・。
そのことが心の傷になってずっと残っていく。同級生が一人自殺した。「サトルに謝るために、あっちに行く」と言い残して。
残った4人はサトルの死の真相を伝えるためサトルの実家へ向かう。
日本社会には暴力の支配する闇の密室が残っている。
・・・・・・自分は高校では柔道部、大学では少林寺拳法部に入っていました。練習はけっこう厳しかったのですが、ここに描かれているような暴力支配や異常な先輩はまったくいませんでした。
充実していた思い出が強かっただけに、この短編には非常に驚きました。